Pixel Clockとモニターのオーバークロック
以前の記事でPixel Clockという用語に少しばかり触れた。
いずれ記事にしたいと結ばれているので今回これについて書いてみる。今回まとめて解説するモニターのオーバークロックにも関わりが深く、雰囲気だけでも理解しておくと有益かと思う。

ラフに書いておくと、HDMIなどの接続方法ごとに異なるPixel Clock上限を超えない範囲でリフレッシュレートを上げていく、というのがモニターのオーバークロックとなる。またPixel Clockにはある意味無駄な部分があって、そこを削減して更に上を狙うことができる。
前半はPixel Clockの話題が続くことになる。
- Pixel Clock (Dot Clock) とは
- Pixel Clockの計算方法
- 見えないピクセルを数える
- ブランキング期間の決定
- モニターのオーバークロック (考え方)
- モニターのオーバークロック (実際の手順)
- 確認方法
- おわりに
Pixel Clock (Dot Clock) とは
モニターの1ピクセルを表示するのに必要な時間の逆数。1秒間に表示できるピクセル総数ともいえる。解像度やリフレッシュレートに比例して大きくなる。単位をMHzで表す。Dot Clockとも呼ばれる。カタカナでピクセルクロック、ドットクロックとするものも多い。
PCとモニターを接続する端子によって上限が決まっている。たとえばHDMI 1.3/1.4では340MHz。
Pixel Clockの計算方法
をすべて掛けて求めることが出来る。たとえば解像度1920x1080、リフレッシュレート60HzのモニターのPixel Clockは
として求められれば話は単純だが、これは誤り。大抵は148.50MHzである。なぜ124.416MHzではなく148.50MHzなのかという話へ進めていく。
見えないピクセルを数える
目視で数えてみても、自分のモニターのピクセル数は1920x1080で間違いないし、リフレッシュレートは60Hzに設定している。ほかに関わってくる値は何だろうか。
これには目視できないエリアが関係する。ブランキング期間 (非表示期間) と呼ばれるそれは、フロントポーチ、バックポーチ、同期パルス幅という3つのエリアに分かれている。
前回の記事で使ったCustom Resolution Utility (CRU) を用いてブランキング期間を確認してみたところと、ブランキング期間と表示エリアの位置関係のようなものを示した図が以下になる。


右の図でいう青色部分、表示エリアがモニターとして働いている。それ以外は実際のモニターでは見えていない部分。しかしPixel Clockの計算には含める。
左のスクリーンショットで言えば、ActiveのHorizontal PixelsとVertical linesではなく、Totalの両数値を使う。Totalのピクセル数はActiveとBlankingの和で、BlankingはFront porch、Sync width、Back porchの和になっていることを確認する。
計算方法は正しくは
- 水平のピクセル数 (水平の表示エリア + 水平フロントポーチ + 水平バックポーチ + 水平同期パルス幅)
- 垂直のピクセル数 (ライン数) (垂直の表示エリア + 垂直フロントポーチ + 垂直バックポーチ + 垂直同期パルス幅)
- リフレッシュレート
の掛け算であることが分かった。もう一度計算してみる。
無事148.50MHzにたどり着いた。
ブランキング期間の決定
先ほど、解像度が1920x1080でリフレッシュレートが60HzであればPixel Clockは大抵148.50MHzであると書いた。ブランキング期間は何によって決まるのか。
これは規格化団体が決めているものがあるから、それに従ってメーカーが出荷前に設定するという話である。現在主流な規格にはVESA CVTやCEA-861がある。しかし、もとはブラウン管ディスプレイの時代に必要だったもので、液晶ディスプレイが主流の今では形式的なものになりつつある。
このあたりの話はこの方のブログに詳しく取り上げられている。
PCディスプレイの信号タイミング基準について - Diary on wind
ただし144Hzのような高リフレッシュレートモニターは事情が異なる。自分の見聞きした範囲では、高リフレッシュレート動作時についての規定が存在しないのか、各メーカーが独自の設定を施していることが多いようだ。
また、やり方は後述するが、ブランキング期間を自分で設定することもできる。
Video TimingとEDID
ちなみに、ブランキング期間や表示解像度をまとめたものをVideo Timing、合計タイミング、パラメーター、Display Timingなどと呼ぶ。
Video TimingはEDID (Extended Display Identification Data) というデータ形式をとってモニターからPCへ渡されている。モニターの内部メモリに書き込まれた内容は編集できないが、渡されたEDIDの状態なら好みに編集してしまえる。これに注目したのがCRUであり、前回の記事での作業内容および以下の作業内容はCRUを利用したEDIDの編集といえる。
前回の記事。
モニターのオーバークロック (考え方)
ようやくモニターのオーバークロックに深く関係する内容になる。
いま、冒頭部分の
またPixel Clockにはある意味無駄な部分があって、そこを削減して更に上を狙うことができる。
について改めて考える。
ある意味無駄な部分とは何なのか理解できるよう解説してきたつもりだ。つまりこれはブランキング期間を指している。目には見えないところにいてPixel Clockを大きくしている存在なので、これを0にしてしまえれば無駄がない。しかし、Video Timingと呼ばれるだけあって諸々のタイミング調整に使う時間でもあり、小さすぎても不安定になる。
また、Pixel Clock上限を気にせずリフレッシュレートを増やすのはどうだろうか。144Hzモニターで240Hz動作が実現できれば夢はあるが、自分のモニターの場合は「範囲超過」と表示されて真っ暗になってしまう。少し上限を超えるくらいなら動作する場合もあるが、基本的にはリスキーらしい。
まとめると
- Pixel Clock上限を超えない
- 小さすぎて不安定にもならない
- できるだけ小さい
を同時に満たすブランキング期間を設定するというのがモニターのオーバークロックにおける正解と考えられる。
モニターのオーバークロック (実際の手順)
今回はCustom Resolution Utility (CRU) 1.4.1を使う。以下のリンク先からダウンロードできる。リンク先ですべての操作方法について学べるので、今回の解説は必要部分のみにしたい。
前回の記事と同じく、操作を間違えたりするとモニターが暗転したままになることがある。基本的には何も触らず20秒程度待てば自動で復帰する。それでもダメという場合、自分は電源3秒押しで強制シャットダウンしたり、今使っているものと違う端子で接続して復帰している。
間違った操作を保存してしまった場合はCRUに同梱されているreset-all.exeを起動してPCを再起動すると初期化できる。また、今の接続方法における自分のモニターのPixel Clock上限もCRUから確認できる。



電源3秒押しはOSやPCパーツへのダメージが考えられる。またオーバークロックは負担をかける行為だ。今回の場合はモニターへの負担が大きい。最悪の場合はモニターやPCが壊れるリスクがある。これらを踏まえて、以下の手順に従う。手順では例として144Hzモニターを150Hzへとオーバークロックしている。
CRUのLCD Reducedプリセットを使う方法 (おすすめ)
LCD Reducedはブランキング期間を適切に低く設定したプリセットなので、自分で手打ちする必要がなくお手軽である。ここまで枕として書いてきたPixel Clockの知識についても、この方法では要求されない。
- スタートボタン -> 設定 -> システム -> ディスプレイ -> ディスプレイの詳細設定 -> ディスプレイのアダプターのプロパティを表示します -> モニター -> モニターの設定 から60ヘルツに切り替えておく (念のため)
- CRUを起動してDetailed Resolutions欄のAddをクリックする
- TimingにLCD Reduced、Refresh rateに150を入力してOKをクリックする
- Detailed Resolutions欄内の操作2.で作った解像度設定を選択し、欄右下にある上向き矢印を押して一番上になるよう並べ替えてOKをクリックする
- PCを再起動する
- スタートボタン -> 設定 -> システム -> ディスプレイ -> ディスプレイの詳細設定 -> ディスプレイのアダプターのプロパティを表示します -> モニター -> モニターの設定 から150ヘルツに切り替える
- 動作が正常であれば変更を維持するをクリックし、不安定であれば20秒程度放置してもとの設定に戻るのを待つ



150Hz動作が正常でさらに高いリフレッシュレートを設定する場合や、不安定でさらに低いリフレッシュレートを設定する場合、手順1.に戻り60Hzに切り替えて再開する。また手順2.でAddのかわりに前回作った解像度設定を選択しEditをクリックする。
CRUからManualで設定する方法 (上級者向け)
Manualはブランキング期間を自由に設定できる。CRUのLCD Reducedでは冗長だという場合、さらなるブランキング期間の最小化を図る方法はManualでの手打ち入力のみ。以下の手順はLCD Reducedを使う場合のものとほぼ同じになる。
- スタートボタン -> 設定 -> システム -> ディスプレイ -> ディスプレイの詳細設定 -> ディスプレイのアダプターのプロパティを表示します -> モニター -> モニターの設定 から60ヘルツに切り替えておく (念のため)
- CRUを起動してDetailed Resolutions欄のAddをクリックする
- TimingにManualを選択し、Front porch、Sync width、Back porchに任意の値を入力、Refresh rateに150を入力してOKをクリックする
- Detailed Resolutions欄内の操作2.で作った解像度設定を選択し、欄右下にある上向き矢印を押して一番上になるよう並べ替えてOKをクリックする
- PCを再起動する
- スタートボタン -> 設定 -> システム -> ディスプレイ -> ディスプレイの詳細設定 -> ディスプレイのアダプターのプロパティを表示します -> モニター -> モニターの設定 から150ヘルツに切り替える
- 動作が正常であれば変更を維持するをクリックし、不安定であれば20秒程度放置してもとの設定に戻るのを待つ
150Hz動作が正常でさらに高いリフレッシュレートを設定する場合や、不安定でさらに低いリフレッシュレートを設定する場合、手順1.に戻り60Hzに切り替えて再開する。また手順2.でAddのかわりに前回作った解像度設定を選択しEditをクリックする。
操作中のスクリーンショットはLCD Reduced利用時とほぼ同様のため省略する。
ちなみに、本来は144Hzモニターならまず145Hz、60Hzモニターならまず61Hzといった感じで、できるだけ細かく刻んで上げていくのがオーバークロックの基本である。
確認方法
以下のサイトにアクセスすると、一番上を流れていくUFOが現在のリフレッシュレートで動いているはず。
おわりに
「モニターのオーバークロック」のために、EDID、Pixel Clock、VESA CVTなどを含めて解説した。内容がとっ散らかった感はある。また誤解のないようできるだけ用語を省略しないようにしたが、これが災いしてより読みづらくなっているとも感じる。
参考までに自分のPC環境を書いておくと
- 【GPU】MSI Radeon RX580 ARMOR MK2 / Adrenalin 2020 20.1.4
- 【モニター】LG 24GM77-B (144Hz) / DisplayPort 1.2? 接続
記事内容に関わりのある部分はこんなところ。この環境で、1920x1080@150Hz Timing : LCD Reducedでの動作までは確認した。145Hzの時点で動作したりしなかったりと不安定だったので、あまり踏み込めていない。
Radeon SoftwareやNVIDIA Control PanelからもCRUと似たような設定ができるので試してみて欲しいところ。
実際のところモニターのオーバークロックにおいてPixel Clock周りがシビアになるのはHDMI 1.3/1.4接続で144Hzから上を目指す場合だけのような気がする。ほかの接続方法は上限に十分余裕を持たせている傾向にあったり、WikipediaによればデュアルリンクDVIに至ってはそもそも上限を持たない。DisplayPortやデュアルリンクDVIでの接続の場合はほぼ端子、ケーブル、モニターのオーバークロック耐性次第。
ブランキング期間などよりPixel Clockに影響するエリアがある。表示エリアの解像度だ。理論上、ここを小さくしてしまえば、画質を犠牲に更なるリフレッシュレートを追求できる。ただし、半端な解像度をモニターが受け付けない場合があるという問題や、Pixel Clock的には余裕がある状態でもモニターの高リフレッシュレート耐性不足により不安定になるという問題がある。このあたりはメーカーやモニターによって異なる。
144Hz / 240Hzでのメモリクロック張り付きを解消する
以前ツイートした内容を記事にしておこうという動機です。
マルチモニター環境でも有名な問題ですが、今回はシングルモニター環境向けです (この記事で扱う作業でマルチ環境での張り付きも解消してるんですが、なぜそっちも解消してるのか理屈がよくわかってないからです) 。
Custom Resolution UtilityでスタンダードなLCDタイミングに準拠した144Hz設定をつくった
— clyde-ne45 (@clyde_ne45) 2020年3月4日
この144Hz設定を使うとアイドル中のVRAMクロックが最高クロックで固定されなくなった pic.twitter.com/vrt6b2j9UA
VRAMクロックが上がりっぱなしになることでアイドルの消費電力が30W前後上がるのを嫌って120Hzモードで使っていたけど、憂いなく144Hzを使える
— clyde-ne45 (@clyde_ne45) 2020年3月4日
はじめに
メモリクロックと言っても、グラフィックボードに搭載されているVRAMとかビデオメモリと呼ばれる部分のクロックのことです。
何らかのモニタリングソフトを用意すると確認しやすいです。たとえばmsi Afterburnerでメモリクロック張り付き状態を見ると以下のように見えます。

画像ではGPU使用率などが低いにもかかわらずメモリクロックだけが跳ね上がっているのが確認できます。PCゲームを起動している場合など、GPUにも負荷がかかっているシーンでメモリクロックが高くなるのは正常な動作であり、問題ないです。
Custom Resolution Utility (CRU) のダウンロード
今回使用するCRUは以下のリンクからダウンロードできます。この記事ではバージョン1.4.1を使いました。
全体の作業内容
- Windows10のディスプレイ設定から60Hzを選択しておく (リスク回避のため)
- CRUでLCD Standardタイミングのプロファイルをつくる
- PCを再起動する
- Windows10のディスプレイ設定からリフレッシュレートを変更する
CRUの使い方を理解している方向けには以上になります。癖のあるソフトなので、手順2「CRUでLCD Standardタイミングのプロファイルをつくる」だけ説明しておこうと思います。
「CRUでLCD Standardタイミングのプロファイルをつくる」詳細
- CRUを起動して「Detailed Resolutions」欄の「Add...」をクリックする
- 「Timing:」欄を「Automatic - LCD Standard」にして「Refresh rate:」欄に144Hzを入力してOKをクリックする
- 「Detailed resolutions」欄右下にある矢印を押して、今作ったプロファイルが一番上になるよう並べ替えてOKをクリックする


CRUは操作を間違えると画面が映らなくなります。F8を押したり、他の映像端子での接続、リモート接続などで復帰できることがあります。
また、144Hzや240Hzではなく、143Hzや239Hzというように少し数値をずらすのがおすすめです (この記事では144Hzにしてしまっています) 。
その他のこと
のちに240Hzモニター (PIXIO PX5 HAYABUSA2) の環境でも張り付き解消を確認しました。
操作は違えど「Radeon Software」や「NVIDIA コントロールパネル」からもCRUと同じような設定ができるはずです。
リンクなど
今回の作業はRedditで見つけたこの書き込みを参考にしました。
(20220204) TechPowerUpの以下のフォーラムも有益かもしれないです。2022年に入っても新規書き込みがあって活発なので。
作業を行うこと自体に支障はないのでほとんど省略しましたが、何を行っているか理解するには「Extended Display Identification Data」「Pixel Clock (Dot Clock)」「VESA Coordinated Video Timings」などを知る必要があります。今回行った内容は、技術的には「垂直ブランキング期間を延長して、ビデオメモリのクロックが制御される猶予の確保」をしているつもりです。いずれ記事にするかもしれません。 記事にしました。